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No. 2 支部企画:中部支部 (2005年02月10日)

カテゴリー: General
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2004年度秋季LET中部支部研究大会特別講演報告:
柳 善和 (名古屋学院大学)
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中部支部では2004年度秋季の支部研究大会を2004年12月11日(土)に岐阜工業高
等専門学校(岐阜県本巣市)で開催した。この大会では、岐阜県を始め中学校、
高等学校学校の先生方からも多数の参加があった。その中で呼び物は、「観点別
評価の構想とその実践」と題する松浦伸和氏(広島大学)の特別講演であった。

松浦氏は現在教育現場で話題になっている観点別評価の文科省側の取りまとめ役
を担当し、現在でも各地の研究期間、教育委員会、また教育現場でその普及のた
めに講演をされている。ホットな話題であり、この分野の第一人者の講演という
ことで、参加者は有意義な時間を過ごすことが出来たと確信している。

この講演では、「絶対評価と評価基準」という話題から説き起され、「目標に準
拠した評価」が、今回話題になっている「絶対評価」であることを確認した。こ
れは、相対評価の問題点から始まっている。正規分布をもとにする限り、平均点
が50点になることが前提である。ということは、テストの中に教えていないこと
を半分は出題しなければならないことになる。次に、これは集団の中の順位をも
とにしているために、全員がテストの点数を10点上げても誰も評価は上昇しない
ことになる。これでは学力の実態を反映できない。

我が国の英語教育の目標は学習指導要領に示されているが、これに基づいた評価
が「目標に準拠した評価」ということになる。学習指導要領の目標は、第1に、
言語や文化に対する理解を深める、第2に、積極的にコミュニケーションを図ろ
うとする態度の育成、第3に情報や相手の意向を理解する実践的コミュニケーショ
ン能力、第4に自分の意見や考えを表現する実践的コミュニケーション能力、以
上の4点から構成されている。さらに、これらは、(1)知識理解、(2)関心
意欲態度、(3)理解の能力、(4)表現の能力に集約できる。この学力観はい
わゆるcommunication能力とは異質なものであるが、ひとまずこれを英語学力の
構造として話を進めたい。現在は、これらの4つを評価の観点とし、その総体を
英語学力とするという考え方をとっている。

評価基準の設定については、ポイントは「指導して評価する」という順番である。

最初に3年間の計画、次に年間の指導がある。このような計画を基にして1つの授
業が作られる。評価基準を作る前に、授業の目標の設定が必要であるが、これは
生徒との契約事項と考えることが出来る。評価はこのように指導した内容を評価
するものでなくてはならない。講演では実践例をいくつか示して説明をしていた
だいた。

最後に「課題と展望」として、学習指導要領と評価方法の整合性の問題が取り上
げられた。日本の学習指導要領では方向目標を設定しているが、これは相対評価
と結びつきやすい。絶対評価を実現するためには到達目標を設定する必要がある。
また、実践的コミュニケーション能力を「正確さ」と「適切さ」ということばで
表しているが、コミュニケーション能力では「流ちょうさ」「複雑さ」という概
念が必要である。

松浦先生は、「変化の時代」は「挑戦の時代」ということばで講演を締めくくら
れた。

さて、この講演では、ディスカッサントとして松川禮子氏(岐阜大学)をお願い
しており、引き続き松川氏から松浦氏に対して講演についてコメントしていただ
いた。

まず第一に、学習者と教授者にとってこの評価法は役に立っているのか、という
ことが質問された。最終的に与えられる評価がこれまでと同じ4であったり5であっ
たりするのでは、従来と変わらないのではないか。

次に、学習指導要領に示されている目標が方向目標である以上、絶対評価を採用
することは問題があるのではないか。目標準拠を徹底して進めるならば、基準に
到達しないものは到達するまでやらなくてはならないはずだが、それは日本の学
校制度では矛盾する。

最後に、「評価疲れ」ということが言われるが、大事なのは評価ではなくて指導
のはずだ。もっとシンプルな形で評価ができなければ長続きしない、と指摘され
た。

これらのコメントに対して、松浦氏が、観点別評価の原点に返って、さらに教育
をよくするために努力を続けたいという趣旨で説明を追加して講演を終わった。

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