::     
Home > No. 34 支部企画:関東支部


No. 34 支部企画:関東支部 (2010年09月10日)

カテゴリー: General
□■===================
★支部企画コーナー No. 34 関東支部
===================□■
===================
☆Needs Analysis と英語教育
東京都立板橋高等学校 佐藤之美
===================
先日ある研究会の夏合宿で読んだ論文の中にNeeds Analysis(NA)について研究し
たものがあり、ふと自分の生徒たちのニーズについて考えてみた。お客様の多様な
ニーズに応えるのは会社や企業では当たり前のことだ。私たち外国語教育に携わる
者にとって学習者(お客様?)のニーズを分析し、それをもとに年間または卒業ま
でのシラバスを立て、教材を選び、実行するのは大事なこと。またそれについての

授業評価というサイクルで修正していく、といった流れが理想的だろう。しかし実
際は日々の仕事に追われてなかなか思うようにいかないのが現状ではないだろうか
(少なくとも私はそうである)。せめてものつもりで毎年初めの授業で生徒からア
ンケートをとって授業内容に生かそうと心掛けている。
私は東京の公立高校で夜間定時制、国際学科、島(伊豆諸島と小笠原諸島に7つ
の高校)、そして現任校の普通科全日制で教えているが、全く環境や意識も異なる
高校生たちのアンケート結果からなかなか面白いことがわかってくる。アンケート
全体は過去の学習暦や教育環境、学習スタイルなど聞くものであるが、「どのよう
な英語の力をつけたいか」という質問について各学校の特色を考えてみる(以下極
端な例も含まれているがその学校の生徒すべてがそうではないということをお断り
しておく)。
夜間定時制では昼間に仕事を持っていた生徒や、不登校の生徒、私よりも年上の
生徒など様々であったが、一般的な受験という縛りがほとんどなかった。「卒業で
きればいい、簡単なやつ。」といった「高卒資格」という「道具的動機付け」だけ
の生徒もいた。一方、帰国生徒や外国人生徒も多く在籍していた国際学科では「将
来国連などの国際社会で活躍できるような語学力を身につけるため、中途半端な日
本語ではなく、すべて英語で授業してほしい!」「文法などいらないから(要りま
す!)通じるような英語を。」といった非常に高いモチベーションを持った生徒も
多く、彼らにとってチャレンジングな授業を心掛けた。海に囲まれた島では、生徒
たちは口は悪いが驚くほど純粋で、他の人を差し置いて目立つことはしない。英語
嫌いのある男子生徒は「英語なんかいらない、おいは一生島から出ないから(英語
より○○弁の方がよっぽど聞き取れなかった)」。島の発展のためにも、島の良さ
を外に発信するためにも外国語は大切だよとやる気を出させる方が先だった。現任
校の生徒はおとなしく、中学時代リーダーとして人をまとめてきたような目立った
存在はあまり見かけない。何がしたいといった積極的なニーズもほとんどなかった
が、何人かの生徒の希望は「大学の(一般ではなく)推薦やAOに受かるような授
業」、つまり何でもよいが学校の成績につながるような英語の力を身につけたいと
いうものであった。
さて極端な意見ばかり紹介したが、一見全く違うタイプに見えるかもしれないけ
れども、伸ばしたい英語の能力について実は多くの生徒はある共通点を持っていた。
「コミュニケーションがとれるよう使える英語を学びたい」ということ。人と接す
るのが苦手なある生徒は自分のペースで英語の絵本を読めるようになりたい(著者
とその作品とのコミュニケーション)、島の女生徒は単語やなんか難しいことは知
らないが、この島に来てくれた外国人を案内できるようにしたい、と言っていた。
すべての生徒の声に応えることは難しいかもしれないが、結局はそれぞれのニーズ
の基となる基礎の定着を図れるような授業が大事なのかと思う。2013(平成25)年
度の高校入学生から、新しい指導要領に基づいた教科書での授業が始まる。高校の
現場では各校どのようなカリキュラムにするか、検討が始まりつつある。基本は英
語で授業を行い、コミュニケーション能力を育むことを目的の一つとしている。こ
こから幅広いお客様からのニーズをどのようにからめてやっていけるか、これから
の挑戦と言えよう。

コメントを書く

このアイテムは閲覧専用です。コメントの投稿、投票はできません。