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No. 28 支部企画:中部支部 (2010年02月10日)

カテゴリー: General
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★支部企画コーナー No. 28 中部支部
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☆LET中部支部「小学校英語教育研究部会」第52回例会発表者インタビュー
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2010年1月24日(日)に、名古屋市熱田区の名古屋学院大学で「小学校英語教育研究部会」第52回例会が開催されました。「オランダの英語教育:小学校などの授業参観報告」という題目で発表された中部支部長の柳善和先生に、インタビューしました。小学校英語教育研究部会の代表者であり、中部支部事務局長でもある高橋美由紀先生(愛知教育大学)にもインタビューに加わっていただきました。

(1) 昨年9月に、フィンランドとオランダの英語教育を視察されたそうですが、今日はオランダについてのご発表でした。オランダの教育の全体的な印象はどうでしたか。

柳:オランダは、他国で思想信条を理由に迫害された人々を受け入れてきたという歴史があります。教育でも子供たちの個性を生かそうとする伝統があり、今回の視察でもそのような場面を見ることができました。フィンランドの学校では、世界中から参観希望者が押しかけているからだと思うのですが、教室内に部外者がいることに生徒が慣れていました。しかし、オランダの生徒は敏感で、私たちが授業を見ているのを気にしているようなところがありました。視察した小学校では電子黒板が全ての教室にあって、プロジェクターも天井に備え付けです。小学校も中学校も1クラス20人程度です。

(2) オランダの英語教育について教えて下さい。

柳:初等教育は4歳または5歳から12歳までですが、英語教育は小学4年生から始まります。ただし、学校によっては1年生から始めるところもあります。小学校ではコミュニケーションを中心とした授業ですが、中高に入ると一転して文法ドリルや大学入試の受験対策が多く、コミュニカティブ・アプローチによる授業は見ることができませんでした。それでも、社会に出てあれだけ喋れるのは、環境の影響が大きいと思います。社会的なプレッシャーがあって、英語が喋れないとどうにもならないという雰囲気があります。

(3) 今日のご発表では、小学校の英語授業のDVDを見せていただきました。英語教育を専門とする先生は英語だけで授業をしていて、会話のやりとり中心で文字は全く使っていませんでした。身振りや歌を活用して、生徒の注意を約30分間引きつけていました。

高橋:トータル・フィジカル・レスポンス・アプローチと歌を使ったから、あれだけの長時間もちましたね。それから、身近にあるものを、実物を使って動作をつけながら教えたということも大きいです。オランダの気候が寒いからだと思いますが、日常生活に密着しているコート、帽子、スカーフを脱いだり着たりする動作を扱っていました。身近でない動作の場合は、生徒はここまで動けません。また、たった1つの歌でも、テンポや声の大きさを変えることによって子どもを夢中にさせていました。小さな声で歌えば、自信のない子でも参加できます。同時にクラスをcalmdown させることもできていました。自信をつけさせておいて、声を大きくさせていました。担当の先生は、英語教師としてだけではなく、保育者としてもかなりのレベルにあると感じました。

(4) 近年注目を浴びているフィンランドと比べて、オランダの英語教育はどうでしたか。

柳:フィンランドでも、生徒たちの集中力が途切れないことにびっくりしました。フィンランドの小学校はドリル中心でしたが、子どもたちは真面目です。そして、小学校でドリルをやっているにもかかわらず、高校生になるとコミュニケーション中心の授業で喋れるようになっています。フィンランドでも街の中で母語の他に英語でもかなり通じますから、生徒たちもそういったプレッシャーによって、英語を習得していっているのかもしれません。オランダは小学校で英語に慣れさせ、中学・高校でドリルをやっていますから、オランダとフィンランドは逆と言って良いかも知れません。

高橋:フィンランドよりもオランダの方が日本に近いという印象を受けました。フィンランドの方が詰め込み型だという印象をもちました。オランダの方が教え込みではなく、生徒から引き出していました。ただし、見学した限られた授業の比較ですので、断言はできませんが。フィンランドは、先生が教えることに誇りをもっているという点が印象に残っています。そこは学ぶべきだと思います。また、外国語学習では単語の記憶やドリルや文法訳読法の役割というのも、まだまだ残っているのだと思います。それに、重要なのは、家庭で宿題をちゃんとやっているということです。こういったドリル型の勉強の重要性も今後はきちんと検証すべきだと思います。

50回以上も回を重ねている研究部会ですが、仲間内で閉じておらず、知り合いのいない方でも気軽に参加できる雰囲気があります。この研究部会に引き続いて、LET中部支部が共催している小学校英語教育学会愛知支部の研究会も開かれましたが、両方の会に参加されている方も多いようです。今後の予定については、メルマガの研究会情報をご覧下さい。

報告者: 伊藤 隆 (名古屋学院大学)

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