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No. 21 山田 恒夫(関東支部) (2006年09月10日)

カテゴリー: General
メディア教育開発センターの山田恒夫です。杉浦先生のリレートークを拝読させていただいて、10年間心の奥底に抑圧していた記憶が鮮やかによみがえりました。確かにウエストポイントでもマノアでも、かの地の先生方を前に拙い英語でCALLに関する研究発表をしたとき、先生もいらっしゃったのでした。たしか、パワーポイントを効果的に使った発表に感銘を受けた、話が英語になっていなくても聴衆は理解できる(パワーポイントは”language proficiency aid”だったのですね)という、心優しい先生の慰めを深い悔恨とともに思いおこします。

この夏、とある学会でオタワに行きました。英仏語のバイリンガル国家であるカナダや多言語多文化共生をめざすEUを旅すると、日本における第2言語教育、外国語教育についていろいろ考えさせられます。小生自身CALLの研究開発に参加する者として、日本人の英語学習はどうしてこんなに時間がかかるのか、目標の設定と方法がまちがっているのではないか、CALLの効果的利用で劇的な改善は果たせられないか、などとそれなりに考えるところです。

杉浦先生からいただいたお題目、「仕組みを知ることの重要性」についてですが、まず研究者として、CALLコンテンツ制作者として、英語学習の仕組みを解明し、授業や学習ソフトの内容がすべて意味のあることなのか、精査することが必要と思います。説明責任はここでも求められるわけで、科学的根拠(学習のメカニズム)を示せなければせめて効果測定を行う必要があると思います。

学習者にとって「仕組みを知る」ことが学習の助けになるかということでは議論の分かれるところだと思います。杉浦先生は、どのように学習すべきかといった、メタ認知や学習方略のようなお話をなさっているので、これはその通りだと思います。その一方で、英語に関する知識をもつことと、それが使えるということは別という考え方もあり、こうした相違は対象、文脈、状況によるのだと思います。これも10年以上も前に、フロリダ州のある音声学の研究室で共同研究をしたときの話です。そこでは、音声知覚実験の被験者に対し、ターゲットの音韻特徴を事前に詳しく説明されていました。心理学の分野では、これは実験操作の一部であって、あまりしないように思います。言葉で説明すれば「知識」は伝わるという信念は、アカデミックな文化によっても大分ちがうと感じたことがあります。

さていずれにせよ、現場では英語学習メカニズムの全容の科学的解明を待っておれません。今日の学習者への対応を考えなくてはならないからです。また、学習者中心の教育観の普及で、今後学習者ごとの対応を変えていかなくてはならないかもしれません。そこで、いつでも改良・カスタマイズができるようなコンテンツ設計の枠組みが必要と思います。もう紙幅がつきていますが、ここオタワの国際会議も、学習コンテンツ(特に、学習オブジェクト)の共有再利用に関するものでした。

さて、次回のリレーですが、山内豊先生にお願いいたします。先生はリスニングに関して多面的に実証研究を行ってこられ、その成果を小学校英語の教材開発等に利用されています。

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